突然ですが、Govbot(ガボット)ってご存知でしょうか?
「なんだそれ」という人が大半だと思います
こんなやつです。
税理士は、お客様へ行政手続きの手順をお伝えしたり、逆にお客様からど相談いただいたりと、行政手続きを調べることも多い職業です。
このため、共通の窓口があることで、情報提供がしやすくなるのはありがたいこと。
「ここで調べると簡単にわかりますよ!」とお客様へご案内できれば、
- 税理士が専門外のことを全部調べなくて済む
- 役所も税理士も同じ質問に何度も応えずに済む
- 手続きが詳しくない人たちでもAIがくみ取って情報をくれる
こんな感じのメリットがあるんじゃないかな?と思うわけです。
が、実際に使ってみると「全然役に立たないじゃん!」「本当にAI?」と思う部分があったので、税理士的に役に立たない理由を3つを記事にしました。
もちろん活用方法がないわけではないので、活用法や税理士的に期待することを最後にまとめましたので、ぜひ読んでいただければと思います。
2024年3月26日に提供が開始された、「国・地方共通相談チャットボット(通称Govbot(ガボット)」のことで、国・地方への相談窓口を一本化したチャットボットです。問合せニーズが多い、マイナンバー、子育て、医療保険、年金、税、不動産登記、戸籍に加え、令和6年分の所得税の定額減税、年収の壁対策などの新たなトピックについて、よくある質問と回答が用意されています。
参考資料:総務省HP報道資料「国・地方相談チャットボット(Govbot)」の提供開始
Govbot(ガボット)が全然役に立たない3つの理由
さっそく使ってみて感じた役に立たない理由を3つまとめました。
すべての理由に共通するのが「これ、納税者に「ここ見ればわかりやすいし楽ですよ!」」とは絶対に言えないという点です。
1.定型的な質問に追加で質問してもGovbot(ガボット)は答えてくれない
Govbot(ガボット)では、定型的な質問の回答が不十分なことが多くあります。
このため、チャット欄から追加質問をしますが、前の質問を踏まえてくれません。
これは国税庁のふたばや他のチャットボットでも言えることなのですが、非常に不便です。
例えば、「定額減税が始まるらしいけど、どんな制度だろう?」と選択肢から質問したとしましょう。
「定額減税とは、令和6年分の~」といった具合に減税制度について説明してくれています。
ここで、「私はどうすれば減税が受けられるのだろう」と思い、「減税のために私は何をしたら良いですか?」と追加の質問します。
すると・・・・
本来であれば流れ的に3番の選択肢にある回答が一発で示されるべきだと思います。百歩譲っても3番にある「3:所得税の手額減税を受けるためにはどのような手続きが必要ですか?」が1番目の候補として表示されるべきでしょう。
このように、一瞬「え?」戸惑うようなことが多く、知りたいことにスムーズに答えてくれません。
2.必要な情報の全体像が見えない
次の理由は「必要な情報の全体像が見えない」ということです。
例えば、「父が亡くなりました。必要な手続きをすべて教えてください」と質問した場合を考えます。
このケースで通常期待する回答は次のようなものではないでしょうか?
- 全員に共通して今すぐに開始すべき手続きは何か?
- すべきことが複数ある場合、その候補の列挙
- その他人によっては必要な可能性のある手続き
初めてのことですから、「何をすべきか?」だけではなく、「場合によっては必要だから注意してね」という情報も欲しいところです。
しかし・・・・
最初に候補として出てきた上位3つは、質問趣旨とは全く関係のない情報です。これだけの情報では、いったいどうしたら良いのか分かりません。それに、チャットで回答がもらえないのであれば「チャットボット」ですらない気がします。
ChatGPTの方が全然ましな回答をくれます。
3.ごちゃごちゃ難しいことが書いてあって結局わかりづらい
最後の理由は「ごちゃごちゃして結局分かりづらい」という点です。
先ほどの定額減税を例に、「私が定額減税を受けるなら、どんな手続きがいるのだろう?」と思って選択肢を選んだと仮定した場合の回答です。
これ、普通の人は読む気も起きないと思います。これは明らかに国税庁のHPのコピペです。
せめて「サラリーマンの方」「年金受給者の方」「事業者(不動産所得含む)の方」のどれに該当しますか?
みたいなクッションを挟んでくれても良い気がします。
例えばサラリーマンのケースです。その際には「給与以外がない場合には、新たな手続きは不要です。」が先頭に来るべき回答なのでは?と思います。
このように、どの回答も「全て正確な記述」となっています。正確な記述というのは、つまり、誰も読む気がしない文章ということです。
これでは「ここを読んでみてください」と提案しづらいです。
Govbot(ガボット)3つの活用方法
文句ばかり言っていても仕方ないですし、活用方法がないわけではありません。
質問方法を工夫したり、利用目的を明確にすることで役に立つこともあります。
活用方法1.役所等に行く前の書類確認
役所での手続きは、必要な書類を忘れると、もう一度訪れる必要がありますよね。非常に時間と労力を無駄にすることになります。
この際に。Govbot(ガボット)を活用が便利。なぜなら事前に必要な書類を簡単に確認できるからです。
たとえば、「年金の相談に必要な書類は何だろう?」と思った際に、Govbot(ガボット)を活用することで、次のように窓口に行く際に必要な書類を確認することができます。
詳細な情報は年金機構のHPを確認しなければなりませんが、「あ、これ忘れた!」という状況を減らすことができるのではないかな?と思います。
活用方法2.Google検索や役所での会話のための用語確認
行政手続きにおいては、専門的な用語が頻繁に使用されるため、理解が難しい場合があります。
Govbot(ガボット)を用いることで、本来の用語を確認することができます。
これにより、Google検索時や、役所の窓口で相談する際に、検索やコミュニケーションの正確性を高めることができるのではないかな?と思っています。
用語の認識に差があると、
- 思っていたこととは違う説明を受けてしまう
- 何かしら勘違いをしてしまったり
- 同じ話をしているのにお互いに別の話をしているように感じてかみ合わない・・・
みたいなことが起きかねません。これを避けるためにも、用語を確認しておくことが大切です。
自分で調べる際にも、正しい用語をしっていることで、Web上の解説記事の内容が自分の知ろうとしている情報であるかどうかのセルフチェックができます。
活用方法3.どんな制度・支援があるかをざっくり把握する
多くの場合、国や地方が提供する制度や支援については、存在すら知らないことが多いです。
Govbot(ガボット)を利用することで、これらの情報を簡単に把握することができます。
検索方法を知らなくても、チャット画面に出る選択肢をクリックすることで、どのような制度があるのか?どういった手続きが必要になりそうなのか?を何となく頭に入れておくことができます。
詳細は覚えている必要はなく、何かあったときに、「そういえばこんな制度があった気がする・・・」と気が付くことが出来るだけでも状況は違ってきます。
ChatGPTに慣れるとGovbot(ガボット)は非常にストレス
Govbot(ガボット)はAIチャットボットと言ってはいますが、ChatGPTに慣れていると相当ストレス値が高いです。
少なくとも、ChatGPTの登場以降、AIと名につくものに対する期待感というものは、それ以前とは全く異なっていると思っています。
ChatGPTなら本当に「チャット」をしながら情報の深堀ができますが、Govbot(ガボット)はそういった事が現状はできません。普段生成AIを使用している方にとっては非常にストレス値が強いと思います。
となると、このあたりが「チャット」というにふさわしい改良が加えられたらな・・・と思います。
Govbot(ガボット)の事情を少し考えてみる
さて、文句を結構言いましたが、この手の公的な機関のチャットボットがいまいちになる原因について考えると、まあ大目に見ようという気になります。
生成AIでは、ハルシネーションが起きる可能性が高いです。このため、公的機関では「それは困る」という気持ちになるのではないでしょうか。
ちなみにハルシネーションとは、AIが事実ではない情報を生成することを指します。要するに、AIが実際には存在しない詳細や事実を「想像」してしまう現象です。
公的機関が、実際には存在しない制度や、実際には存在しない手続きなどを提供するチャットボットを作るわけにはいきませんよね。
だから現在のようになってしまっているのだと思います。
その辺を含め、しばらくは大目にみてあげるべきかもしれません。
税理士としてGovbot(ガボット)には期待すること
このGovbot(ガボット)は一般の人の利用を想定していると思います。
ただ、税理士や中小企業の経営者、経理担当者が軸となって使用するケースも多いのではないか?と考えています。
というのも、多くの場合、顧問先様は税理士へ、中小企業の従業員は社長や経理といったかたちで、身近にいる「色々詳しそうな人」に対して質問します。
このため、そういった「情報を聞かれる人」が「調べやすいつくり」になってくれるとありがたいな・・・と
「ここで自分で調べて!」と言うのではなく、ざっと調べて伝えてあげられるようになると良いな・・・と
そんな風に変わっていくことを期待しています。