こんにちは、公認会計士・税理士の川畑です。
突然ですが、みなさま、小規模企業共済はご存知ですか??
聞いたことはあるけど、やってない。
- 聞いたことはあるけどやってない
- 共済って言うなら保険みたいなもの?
そう思う方が多いと思います。
小規模企業共済は、一言で言えば「国公認の最強の節税商品」です。
経営者であれば「節税」と言われて気にならない人なんていないと思います。
世の中には多数の節税商品がありますが、その中でも国公認の節税効果が圧倒的に高い節税商品があるので、その概要をざっくり説明します。
小規模企業共済とは何か?
小規模企業共済は、国の機関である中小機構が運営する小規模企業の経営者・役員そして個人事業主を対象とした退職金制度です。現在、全国で約159万人(2022.3現在)が加入されています。
掛金は全額を所得控除できるので、高い節税効果があります。将来に備えつつ、契約者の方がさまざまなメリットを受けられる、今日からおトクな制度です。
小規模企業の経営者の場合、自分自身の退職金として積み立てることが可能になるので、是非加入してください。
節税効果が圧倒的に高い
共済としての目的も大切ですが、一番大きなメリットは、「節税効果」です。
小規模企業共済の掛金は、その全額を所得控除できるので、高い節税効果があります。将来に備えつつ、契約者がさまざまなメリットを受けられる、おトクな制度です。
例えば年間所得2,000万円の人の場合、42.7万円の節税効果があります。
注意点:所得税の節税効果があるので、あくまで個人で払います。法人経営者の場合、社長個人のの所得税の節税効果があるので、法人税の節税効果はありません。
小規模企業共済のおトクな3つのポイント
ポイント1 節税効果が圧倒的掛金は加入後も増減可能、全額が所得控除
月々の掛金は1,000~70,000円まで500円単位で自由に設定が可能で、加入後も増額・減額できます。確定申告の際は、その全額を課税対象所得から控除できるため、高い節税効果があります。
掛金について
掛金月額は、1,000円から7万円までの範囲内(500円単位)で自由に選択できます。
節税効果を最大限に得るためには、MAX7万円✕12ヶ月で、年間84万円掛けることがおすすめです。
そんなに払って大丈夫?お金しんどくない?そんな心配については、ポイント3で解説していきます。
納付方法
毎月の掛金は、個人の預金口座からの振替による払込みとなります。振替日は、毎月18日(18日が休日の場合は翌営業日)です。
掛金の納付方法は、月払い、半年払い、年払いから選択できます。
掛金の増額・減額・前納
掛金月額は、1,000円から7万円までの範囲内(500円単位)で、増額または減額できます。また、前納することもできます。
前納すると、一定割合の前納減額金を受け取ることができます。
今年の「所得税」の節税効果
掛金は、全額を小規模企業共済等掛金控除として、所得から控除できます。
また、1年以内の前納掛金も同様に控除できます。
掛金は、共済契約者自身の収入の中から払い込むことになるのえ、法人や事業の経費にはならない点に注意が必要です。
ポイント2 共済金の受取りは一括・分割どちらも可能
共済金は、退職・廃業時に受け取り可能で、満期や満額はありません。
共済金の受け取り方は「一括」「分割」「一括と分割の併用」が可能です。
一括受取りの場合は退職所得扱いに、分割受取りの場合は、公的年金等の雑所得扱いとなり、税制メリットもあります。
注意点:共済金(解約手当金)について
受け取るためには一定の基準があるので、注意が必要です。
(1)個人事業主の場合
共済金等の種類 | 請求事由 |
共済金A | 個人事業を廃業した場合 共済契約者が死亡した場合 |
共済金B | 老齢給付(65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ人) |
準共済金 | 個人事業を法人成りした結果、加入資格がなくなったため、解約をした場合 |
解約手当金 | 任意解約 |
(2)法人(株式会社など)の役員の場合
共済金等の種類 | 請求事由 |
共済金A | 法人が解散した場合 |
共済金B | 病気、怪我の理由により、または65歳以上で役員を退任した場合(※4) 共済契約者が死亡した場合 老齢給付(65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ人) |
準共済金 | 法人の解散、病気、怪我以外の理由により、または65歳未満で役員を退任した場合 |
解約手当金 | 任意解約 |
(3)共同経営者の場合
共済金等の種類 | 請求事由 |
共済金A | 個人事業主の廃業に伴い、共同経営者を退任した場合 病気や怪我のため共同経営者を退任した場合 |
共済金B | 老齢給付(65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ人) |
準共済金 | 個人事業を法人成りした結果、加入資格がなくなったため、解約をした場合 |
解約手当金 | 任意解約 |
ポイント3 低金利の貸付制度を利用できる
掛金の納付期間に応じた貸付限度額の範囲内で、事業資金等を借り入れることができます。
借り入れ限度額は、掛金の7~9割の範囲内で、借り入れができます。
iDeCoと大きく異なるのが、この貸付制度です。
ポイント1で、「そんなに払って大丈夫?」という心配がないとお話したのは、この「貸付制度」があるからです。
iDeCoの場合には、原則として60歳まで引き出すことが出来ません。この資金の固定が、万が一事業で資金が必要になったり、生活上の資金難が起きた場合に困ることになります。
しかし、小規模企業共済なら、低金利で貸付が受けられるので事業者としては非常に安心できます。
色々な貸付制度
- 一般貸付
- 緊急経営安定貸付
- 傷病災害時貸付
- 福祉対応貸付
- 創業転業時・新規事業展開等貸付
- 事業承継貸付
- 廃業準備貸付
小規模企業共済の加入資格
小規模企業共済制度には、従業員数20人以下の個人事業主または役員が加入できます。
ただし、卸売業・小売業・サービス業(宿泊・娯楽除く)の場合には、従業員数5人以下です。
詳細な加入条件
以下のとおりです。次のいずれかに該当する場合に加入できます。
1. 建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
2. 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
3. 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
4. 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
5. 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
6. 上記「1」と「2」に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)
小規模企業共済の共済金、2つの注意点
加入期間(掛金納付月数)が、240か月(20年)未満で任意解約をした場合は、元本割れします。
加入期間が特に短い場合には掛け捨てになります。
- 共済金A・共済金B:掛金の納付が6ヵ月未満
- 準共済金・解約手当金:掛金の納付が12ヶ月未満
加入手続き
小規模企業共済に加入する際の手続き方法です。加入する方の立場や、加入手続きを行う窓口によって手順が異なります。
加入手続きは、中小機構が業務委託契約を結んでいる団体・金融機関の窓口で行う必要があります。
※オンライン加入もできるようです。
オンライン加入はこちらをご確認ください。
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STEP1:必要書類を入手
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STEP2:書類へ記入
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STEP3:窓口へ提出
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STEP4:中小機構からの書類の受取
申込みには、公的書類と中小機構への契約申込書などが必要です。
1.必要書類(公的書類等)
加入する方の立場によって、必要となる書類が異なります。
個人事業主の場合
確定申告書の控え 提示書類
※事業を始めたばかりで『確定申告書』がない場合は、『開業届』の控え
法人(株式会社など)の役員の場合
役員登記されていることが確認できる書類 提示書類
※履歴事項全部証明書(商業・法人登記簿謄本)など
※交付後3か月以内の原本が必要です。
共同経営者の場合
- 個人事業主の確定申告書の控え 提示書類※1
- 個人事業主と締結した共同経営契約書の写し 提示書類
- 報酬の支払い事実が確認できる書類 提示書類※2
※1事業を始めたばかりで『確定申告書』がない場合は、『開業届』の控え
※2社会保険の標準報酬月額通知、青色申告決算書、白色申告決算書および賃金台帳、国民健康保険税・介護保険料簡易申告書等
2.必要書類(中小機構の様式書類)
- 契約申込書
- 預金口座振替申出書
共済金等の受取方法
共済金等の受取方法は、「一括受取り」、「分割受取り」および「一括受取りと分割受取りの併用」の3種類です。
なお、「分割受取り」および「一括受取りと分割受取りの併用」を希望する場合は、以下の要件の全てを満たす必要があります。
- 共済金Aまたは共済金Bであること
- 請求事由が共済契約者の死亡でないこと
- 請求事由が発生した日に60歳以上であること
- 共済金の額が次のとおりであること
- 分割受取りの場合:300万円以上
- 一括受取りと分割受取りの併用の場合:330万円以上(一括で支給を受ける額が30万円以上、分割で支給を受ける額が300万円以上)
小規模企業共済について教えてくれるGPTsを作ってみました
ChatGPTの機能を使用し、小規模企業共済について教えてくれるGPTsを作成してみました。
あくまで”遊びとして”使ってみてください。
https://chat.openai.com/g/g-ZUhT0aSix-xiao-gui-mo-qi-ye-gong-ji-asisuto
(参考)一般貸付制度について
ここでは、参考として一般貸付制度の概要について記載しています。一般貸付なら、もしものときに、迅速に事業資金を借入れできます。迅速に事業資金を借入れできる便利な制度です。
1. 借入れの限度額
掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、10万円以上2,000万円以内(5万円単位)で借入れをすることができます。
貸付限度額は、算定基準日における掛金残高と掛金の納付月数に応じて、年に2回(4月・10月)設定されます。
2. 借入期間
借入金額に応じて、以下の借入期間より選択できます。
- 100万円以下 : 6か月、12か月
- 105万円~300万円 : 6か月、12か月、24か月
- 305万円~500万円 : 6か月、12か月、24か月、36か月
- 505万円以上 : 6か月、12か月、24か月、36か月、60か月
3. 借入金の返済方法
借入期間が6か月または12か月の場合 : 期限一括償還
借入期間が24か月、36か月、60か月の場合 : 6か月ごとの元金均等割賦償還
4. 利率
年1.5%
上記は、本記事投稿時点の利率です。契約者貸付けの最新の利率については中小機構のHPを参照してください。
5. 利子の支払方法
返済方法によって、利子の支払方法も変わります。
期限一括償還 : 借入時に一括前払い
割賦償還 : 借入時および返済時に6か月分前払い
6. 延滞利子
年14.6%
7. 申込受付期間
随時受付
その他
借入期間内に借入金を返済できないような事態が生じた場合、新たな借入れに必要な約定利子を支払うことで、借り換えができます。
注意事項
内容は本記事執筆時点のものです。最新の情報やより詳細な情報は中小機構HPを必ず参照してください。