「親が亡くなって遺産を受け取ることになった。相続税って、うちにもかかるのだろうか……」
そんな不安を抱えている方は、決して少なくありません。相続税は「お金持ちだけにかかる税金」というイメージが強い一方で、近年は課税される方の範囲が広がっており、他人事ではなくなっています。
この記事では、相続税の計算方法を「基礎控除の求め方」から「具体的な税額のシミュレーション」まで、税理士がステップごとにわかりやすく解説します。
記事を読むことで、次のことが理解できます。
- 自分に相続税がかかるかどうかの判断基準
- 基礎控除の計算式と法定相続人の数え方
- 相続税の税率・速算表の読み方
- 具体的な計算の流れ(夫が死亡・遺産1億円のケース)
- 相続税を合法的に減らすための主な対策
相続税がかかるのはどんなケース?実は「かかる人は少ない」
相続税と聞くと「莫大な財産を持つ人だけの話」と感じる方も多いですが、実際のところはどうなのでしょうか。
相続税の課税割合は約10%(令和6年)
国税庁の「令和6年分相続税の申告事績の概要」によると、令和6年に亡くなった方のうち、相続税の申告が必要だったのは10.4%でした。つまり、10人のうち9人は相続税がかからない、ということです。
最近の推移は次の通りです。
令和4年: 9.6%
令和5年: 9.9%
令和6年: 10.4%
「うちは大丈夫かな」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
ただし、この割合は地域によって大きく差があります。都市部、特に横浜・東京などの不動産価格が高いエリアでは、不動産の評価額が高くなりやすいため、課税割合が全国平均を上回るケースも珍しくありません。
「相続税がかかるかも」と感じたら早めの対策を
相続税がかかるかどうかの判断は、まず「基礎控除」の金額と照らし合わせることが出発点です。遺産総額が基礎控除以下であれば、原則として相続税はかかりません。
基礎控除の計算方法は次のセクションで詳しく説明しますが、「かかるかも…」と少しでも不安を感じたら、早めに専門家へご相談されることをおすすめします。対策は亡くなる前から計画的に行うほど効果が大きくなるからです。
相続税の基礎控除の計算方法
相続税の計算でまず最初に確認すべきなのが「基礎控除」です。遺産の合計額がこの金額以下であれば、相続税はゼロになります。
基礎控除の計算式:3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
基礎控除は、以下の計算式で求めます。
基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば、法定相続人が「配偶者(妻)と子ども2人」の合計3人の場合は、以下のようになります。
3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
遺産総額が4,800万円以下であれば、原則として相続税の申告は不要です。ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などを適用することで基礎控除以下になる場合には、申告が必要ですのでご注意ください。
法定相続人の数え方(養子・代襲相続)
法定相続人とは、民法で定められた「遺産を相続する権利を持つ人」のことです。基本的には、配偶者・子ども・父母・兄弟姉妹などが該当します。
法定相続人の数え方には、いくつか押さえておきたいルールがあります。
- 養子の場合: 実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人まで法定相続人としてカウントできます
- 代襲相続: 子どもが被相続人より先に亡くなっていた場合、その孫が代わりに相続人となります(代襲相続人として人数にカウントされます)
- 相続放棄した人: 相続を放棄した人も、基礎控除の計算では法定相続人の数に含めます
基礎控除の計算例:家族構成別シミュレーション
| 家族構成 | 法定相続人の数 | 基礎控除の額 |
|---|---|---|
| 配偶者のみ | 1人 | 3,600万円 |
| 配偶者+子1人 | 2人 | 4,200万円 |
| 配偶者+子2人 | 3人 | 4,800万円 |
| 配偶者+子3人 | 4人 | 5,400万円 |
自分の家族構成に当てはめて、まずは基礎控除額を確認してみてください。
相続税の課税対象となる財産とは
基礎控除と比較する「遺産の総額」には、何が含まれるのかを正確に理解しておくことが大切です。
プラスの財産(現金・不動産・有価証券など)
亡くなった方(被相続人)が持っていたプラスの財産が対象です。主なものは以下のとおりです。
- 現金・預貯金
- 不動産(土地・建物)
- 有価証券(株式・債券・投資信託など)
- 事業用資産(機械・設備・在庫など)
- ゴルフ会員権、自動車、貴金属、美術品など
不動産は「時価」ではなく、土地は「路線価」、建物は「固定資産税評価額」をもとに評価するため、実際の売却価格より低い評価になることが一般的です。なお、自宅がマンションの場合には、令和6年1月1日以降、新たに定められた「居住用の区分所有財産」として評価することになります。
みなし相続財産(生命保険・死亡退職金)
亡くなったことをきっかけに受け取る財産で、相続財産とは別に扱われますが、相続税の計算上は「みなし相続財産」として含まれます。
- 生命保険の死亡保険金
- 死亡退職金(会社から支払われるもの)
ただし、それぞれに非課税枠があります。
非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数
法定相続人が3人なら、生命保険・死亡退職金それぞれに1,500万円の非課税枠があります。
非課税財産(墓地・仏壇など)
以下の財産は相続税の課税対象外となります。
- 墓地・墓石・仏壇・仏具
- 国・地方公共団体への寄付金
- 相続人が受け取った一定の生命保険金・退職金(非課税枠以内の部分)
マイナスの財産(借金・葬儀費用)
遺産総額からは、以下のマイナスの財産を差し引くことができます。
- 借入金・住宅ローン残高
- 未払いの税金・医療費
- 葬儀費用
「遺産総額」とは、「プラスの財産+みなし相続財産-非課税枠-マイナスの財産」で計算します。この金額が基礎控除を超えると、相続税の対象になります。

相続税の税率と計算ステップ
遺産が基礎控除を超えた場合、いよいよ相続税の税額を計算します。相続税の計算は4ステップで行います。
相続税の速算表(税率10%〜55%)
相続税は、金額が大きくなるほど税率も高くなる「超過累進税率」を採用しています。
| 法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | — |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
STEP1:課税遺産総額の計算
課税遺産総額 = 遺産総額 - 基礎控除額
STEP2:法定相続分で按分して相続税の総額を計算
課税遺産総額を、法定相続分(民法で定める割合)どおりに分けたと仮定して、各人の取得額に速算表の税率を掛けます。
この仮の税額をすべて合計すると「相続税の総額」が求まります。
STEP3:各相続人の実際の取得割合で分配
STEP2で求めた「相続税の総額」を、実際の遺産分割の割合に応じて各相続人に振り分けます。
STEP4:各種控除(配偶者控除・未成年者控除など)を適用
各相続人の税額から、該当する控除を差し引いて最終的な納税額を求めます。主な控除は以下のとおりです。
- 配偶者の税額軽減: 配偶者が相続する財産が「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか多い金額以下であれば、配偶者の相続税はゼロになります
- 未成年者控除: 相続人が未成年の場合、18歳になるまでの年数×10万円を控除
- 障害者控除: 相続人が障害者の場合、一定額を控除
- 贈与税額控除: 過去に受け取った贈与に対して贈与税を支払っていた場合、二重課税を防ぐために控除
具体的な計算例(夫が死亡・遺産1億円・妻と子2人のケース)
遺産1億円で、法定相続人3人のケースで計算してみましょう。
【前提条件】
- 被相続人:夫
- 相続人:妻、長男、次男(法定相続人3人)
- 遺産総額:1億円(現金3,000万円、不動産7,000万円)
- 借入金・葬儀費用:なし
【STEP1】基礎控除を計算する
3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
【課税遺産総額】
1億円 - 4,800万円 = 5,200万円
【STEP2】法定相続分で按分して仮の税額を計算する
法定相続分は、妻1/2・長男1/4・次男1/4です。
| 相続人 | 法定相続分 | 取得額 | 税率・控除 | 仮の税額 |
|---|---|---|---|---|
| 妻 | 1/2 | 2,600万円 | 15%-50万円 | 340万円 |
| 長男 | 1/4 | 1,300万円 | 15%-50万円 | 145万円 |
| 次男 | 1/4 | 1,300万円 | 15%-50万円 | 145万円 |
相続税の総額 = 340万円 + 145万円 + 145万円 = 630万円
【STEP3・STEP4】実際の取得割合で分配し、配偶者控除を適用する
今回は法定相続分どおりに分割したと仮定します。妻は1億6,000万円以下の相続なので、配偶者控除により税額はゼロになります。
| 相続人 | 按分した税額 | 配偶者控除後 | 最終納税額 |
|---|---|---|---|
| 妻 | 315万円 | ▲315万円 | 0円 |
| 長男 | 157.5万円 | — | 157.5万円 |
| 次男 | 157.5万円 | — | 157.5万円 |
合計納税額 = 315万円(長男・次男の合計)
このケースでは、妻は配偶者控除の適用で相続税がゼロになり、子ども2人合わせて315万円の相続税が発生します。
相続税を減らすための主な対策
相続税の対策は、早く始めるほど効果が大きくなります。主な対策を3つご紹介します。
生前贈与の活用
生きているうちに財産を少しずつ贈与することで、相続時の遺産総額を減らす方法です。
- 暦年贈与: 年間110万円の基礎控除を使い、毎年少しずつ贈与する(1年ごとに110万円以下なら贈与税がかかりません)
- 教育資金・結婚子育て資金の一括贈与: 一定の要件を満たせば、まとまった金額を非課税で贈与できる特例があります
【注意書き】
ただし、2024年1月1日以降に行われた贈与から、相続財産に加算される期間が段階的に延長されます。最終的には7年分が加算対象となりますが、完全に7年分が適用されるのは2031年1月以降の相続からです(改正前は3年)。なお、延長された4年間(4〜7年前)の贈与は合計100万円まで加算対象外となる緩和措置があります。早めの対策が重要です。
小規模宅地等の特例
自宅や事業用の土地を相続する場合に、土地の評価額を最大80%減額できる特例です。
たとえば、評価額5,000万円の自宅の土地(330平方メートル以下)を配偶者や同居の子どもが相続した場合、評価額を1,000万円まで下げることができます。不動産を多く持つ方にとっては非常に大きな効果があります。ただし、適用要件が細かく定められているため、税理士への確認が必須です。
生命保険の非課税枠活用
前述のとおり、生命保険の死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。
たとえば法定相続人が3人なら1,500万円まで非課税です。現金で持っているよりも、生命保険に変換しておくことで、課税される財産を減らす効果があります。また、生命保険は受取人を指定できるため、遺産分割のトラブル防止にも役立ちます。
まとめ
この記事では、相続税の計算方法について解説しました。要点を整理します。
- ✅ 相続税がかかるのは全体の約9〜10%。まず基礎控除と遺産総額を比較することが出発点
- ✅ 基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数。家族構成によって変わる
- ✅ 相続税は4ステップで計算。課税遺産総額の算出 → 法定相続分で按分 → 実際の割合で分配 → 各種控除の適用
- ✅ 配偶者控除の効果は絶大。1億6,000万円以下の相続なら配偶者の税額はゼロ
- ✅ 節税対策は早めが肝心。生前贈与・小規模宅地の特例・生命保険の活用が主な手段
相続税の計算は複雑で、自分で完全に把握するのは難しい部分もあります。勘違いや誤解、2次相続を考慮せずに動いてしまったがゆえにトータルでは損をしてしまうケースもあります。
「自分の場合はどうなるのか」を把握したい方は、一度ぜひ税理士にご相談ください。
相続税の全体像についてもう少し知りたい方は「知らずにいるのはリスク高?相続税の基礎知識」も併せてご確認ください。
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