税理士はいらないのか?
[baloon id=”3″]最近、ChatGPTがすごく進化してるって聞くけど、もしかして税理士さんに頼まなくても自分で税務処理できちゃうのかな?[/balloon]
こんな疑問を持つ方、最近増えているのではないでしょうか。
実際、生成AIの進化は目覚ましく、2025年1月には生成AIが大学入試共通テストで主要15科目のうち9科目で満点を取り、15科目の得点率は96.9%となるというニュースが話題になりました(※)。
膨大な知識を瞬時に引き出し、複雑な問題にも的確に答える――そんなAIの姿を見ると、「もう専門家なんていらないんじゃないか」と思ってしまうのも無理はありません。
特に税法や税務の分野は、条文、通達、判例など、人間が一生かけても読み切れないほどの膨大な知識が存在します。そのすべてをAIが学習しているとなれば、税理士はいらいないように思えてきます。
[baloon id=”1″]確かに生成AIの知識量は驚異的です。でも、本当に「誰にとっても」税理士が不要になったのでしょうか?今日はこの問いについて、少し深く考えてみたいと思います。[/balloon]
※今年の大学入学共通テスト、AIは9科目で満点…「苦手だった日本史や図形問題も克服」
生成AIの圧倒的な知識量の前に税理士はいらない?
まず、生成AIがどれほどすごいのか、改めて整理してみましょう。
ChatGPTをはじめとする生成AIは、税法、会計基準、過去の判例、国税庁の通達など、税務に関する膨大な情報を学習しています。その知識量は、一人の税理士が何十年かけて積み上げてきた経験をはるかに超えるものです。
例えば:
- 税法の条文:所得税法、法人税法、消費税法など、数百に及ぶ条文とその解釈
- 過去の判例:何千件もの税務訴訟の判決内容とその論点
- 実務通達:国税庁が発表する実務上の取り扱いに関する膨大な指針
- 最新の改正情報:毎年変わる税制改正の内容
これらすべてに瞬時にアクセスし、質問に対して秒単位で回答を返してくれるのです。しかも24時間365日、疲れることも休むこともなく。
ChatGPTなどの生成AIが優秀なら税理士はいらないのか?
[baloon id=”3″]やっぱり税理士さんって必要ないんじゃ…?[/balloon]
この圧倒的な知識量を前にすれば、「税理士なんて完全に不要だ」という結論に至るのは自然な流れかもしれません。
実際、こんなことができるAIがあれば:
- 確定申告の方法を聞ける
- 節税対策のアイデアをもらえる
- 複雑な税務処理の手順を教えてもらえる
- 税制改正の内容を解説してもらえる
わざわざ高い報酬を払って税理士に依頼する理由がないように思えます。
でも、ちょっと待ってください。
ここで重要な質問があります。
「誰にとって」税理士が不要なのでしょうか?
そして、その「誰か」は、本当にあなた自身のことなのでしょうか?
「知識がある」ことと「活用できる」ことは別物
ここで、私自身の経験をお話しさせてください。
数年前、私は宇宙や天体物理学に興味を持ち、専門書を何冊か購入しました。ブラックホールの形成メカニズムや、宇宙の膨張についての最新理論が書かれた本です。本屋で手に取ったときは、「これを読めば宇宙のことがわかる!」とワクワクしていました。
でも、結果はどうだったか?
正直に言います。ほとんど理解できませんでした。
確かに、私が知りたい情報はその本の中にすべて書かれているはずです。でも、それを理解するための前提となる物理学の知識、数学的な素養、天文学の基礎的な概念――そういったものが私には決定的に欠けていたのです。
もっと困ったことに、いくつかの現象については、自分なりに「こういうことだろう」と誤解したまま理解してしまっていました。専門家からすれば「それは全く違う」という内容を、「わかった気」になっていたのです。
つまり、こういうことです:
- 膨大な知識は目の前の本にあった
- でも、その本から十分な情報を引き出すことができなかった
- さらに悪いことに、間違った理解をしていることにすら気づけなかった
これは、生成AIと税務の関係にもそのまま当てはまる話なのではないでしょうか??
生成AIに「まともな質問」ができるのか?
[baloon id=”1″]AIの回答の質は、質問の質に大きく左右されます。でも、専門知識がない状態で、的確な質問ができるでしょうか?[/balloon]
生成AIを使う上で、多くの人が見落としがちな問題があります。
それは、「前提知識や自分の中のバイアスが、質問の仕方を歪めてしまう」という問題です。
具体的には:
①生成AIにまともな質問ができるのか?
税務の質問をするには、まず何を聞くべきか?どのような論点を整理する必要があるのか?が分かった上で質問をする必要があります。でも、税務の知識がなければ、そもそも何を聞けばいいのかがわかりません。
例えば、「役員報酬を経費にしたい」という相談があったとします。
税務の知識がある人なら、こんな感じで質問すると思います:
- 「定期同額給与の要件を教えてください」
- 「事前確定届出給与との違いは?」
- 「不相当に高額な部分の判定基準は?」
でも、知識がない人は:
- 「役員報酬は経費になりますか?」
という大雑把な質問になってしまいます。この質問では、AIは一般論しか答えられず、あなたの状況に本当に必要な情報は得られません。
②生成AIの回答を十分に理解できるのか?
仮にAIが正確で詳細な回答をしてくれたとしても、その内容を理解できるかは別問題です。
税務の世界では、一つの言葉に複数の意味があったり、似たような制度でも適用要件が微妙に違ったりします。その違いを理解せずに「だいたいこういうことだろう」と解釈してしまうと、致命的な誤りにつながります。
③生成AIが間違った場合に気がつけるのか?
生成AIは時に間違った情報を、自信満々に答えることがあります。これを「ハルシネーション(幻覚)」と呼びます。
税務の専門家であれば、「この回答はおかしい」とすぐに気づけます。でも、知識がない人は、AIの回答をそのまま信じてしまうでしょう。
結論として:
自分の能力以上にAIの力を引き出すことはできません。AIは道具であり、それを使いこなすには使い手の能力が問われるのです。
税理士にとっても税理士は必要
ここで興味深い事実をお伝えします。
税のプロである税理士も、実は他の税理士に相談することがあるんです。
私たち税理士は、確かに税務の専門家です。でも、税法はあまりにも広大で、すべての領域に精通することは不可能です。
例えば:
- 相続税が専門の税理士は、国際税務については詳しくないかもしれません
- 法人税務が得意な税理士でも、医療法人特有の税務は経験が少ないかもしれません
- 一般的な税務は問題なくても、組織再編税制のような高度な分野は別の専門家に聞きたくなります
そんなとき、私たちは自分で条文や判例を読み込みます。でも、それだけでは不安が残ることがあります。
「この解釈で本当に大丈夫か?」 「実務上、どう処理されているのか?」 「過去に似たようなケースで問題が起きたことはないか?」
こういった疑問に対しては、その分野に精通した税理士に相談するのが一番確実なのです。
なぜAIではダメなのか?
[baloon id=”3″]税理士さんもわからないことがあるなら、AIに聞けばいいんじゃないの?[/balloon]
確かに、AIに聞くこともできます。でも、AIが言う「大丈夫です」という回答は、自分が条文や判例を読み込んで「大丈夫そうだな」と思うのと、実はあまり変わりません。
そこには実際の経験やノウハウがないのです。
- 「この判断で税務調査が入ったらどう説明するか」
- 「似たようなケースで否認された事例があるか」
- 「この処理方法を選ぶと、将来的にどんなリスクがあるか」
こういった実務的な知見は、AIには持ちえません。
さらに困ったことに、専門家であるがゆえに、無意識のうちに自分の主張を裏付けるような偏った質問をAIにしてしまう可能性もあります。
「こうあってほしい」というバイアスが、質問の仕方を歪めてしまうのです。
通常の税務なら生成AIで十分?
[baloon id=”1″]正直に言えば、税理士にとってみれば、通常の税務処理はAIがあればほとんど問題なくこなせます。[/balloon]
実際、多くの中小企業の税務は、基本的な知識と経験があれば対応できます。
- 毎月の記帳代行
- 給与計算
- 定型的な法人税申告
- 一般的な消費税の処理
こういった業務については、税理士がAIを活用すれば、従来よりもはるかに効率的に、正確に処理できます。
つまり、税理士にとっては、AIがあれば自分と同レベルの税理士は不要になるということです。
しかし、どれだけAIが優秀であっても、より高度な専門知識と実務経験を豊富に持つ税理士は、やはり必要なのです。
一般の経営者にとってはどうか?
ここまでの話を整理すると、こういう構図が見えてきます:
税理士が、より専門的な税理士に相談する
この構図は、実は:
一般の納税者が、税理士に相談する
という構図と全く同じなのです。
どちらも、「知識やノウハウの少ない人が、多い人へ頼る」という関係です。
同じ構図なら、同じ問題が起きる

税理士がAIを使うときに起こりうる問題:
- 自分に都合の良い回答を引き出してしまう
- 回答の中の誤りに気づけない
- 前提知識が不足していて質問が適切にできない
これらは、一般の経営者がAIを使うときにも、まったく同じように起こりえます。
むしろ、税務の基礎知識がない分、問題はより深刻かもしれません。
[baloon id=”5″]なるほど…税理士さんでさえ専門家に相談するなら、私たちが税理士さんに頼るのは当然なのかも。[/balloon]
「誰にとって」税理士が不要なのか?
ここまで考えてくると、答えが見えてきます。
ChatGPTがいれば、税理士にとって「自分と全く同レベルの税理士」は不要になります。
でも、高レベルな税理士、専門性の高い税理士は必要です。
同じように考えれば:
一般の経営者にとって、税理士は必要なのではないでしょうか?
つまり、こういうことです
生成AIがいれば税理士が不要になる――これが正しいのは、「税理士(or税務に詳しい人)にとって」という条件付きなのです。
一般の人にとって税理士が不要になるわけではない可能性が高いということです。
どんな人なら税理士なしでもいいのか?
[baloon id=”1″]もちろん、すべての人に税理士が必要だと言っているわけではありません。[/balloon]
税理士に頼らず、生成AIだけで税務を処理できる人もいるでしょう。
それは、こんな人です:
①十分な基礎知識がある人
- 簿記の基礎を理解している
- 税法の基本的な構造を知っている
- 会計と税務の違いを理解している
②適切な質問ができる人
- 自分が何を知りたいのかを明確にできる
- 抽象的な質問ではなく、具体的な論点を絞れる
- 必要に応じて追加質問ができる
③回答を評価できる判断力がある人
- AIの回答が正しいか検証できる
- 複数の情報源で確認する習慣がある
- おかしな回答に気づける感覚がある
④リスクを受け入れられる人
- 間違った処理をしてしまったときの責任を取れる
- 税務調査で指摘を受けたときに自分で対応できる
- 追徴課税が発生しても問題ない資金的余裕がある
これらすべてを満たす自信がある人だけが、生成AIを活用して税理士と関わらない道を選ぶべきです。
まとめ:「誰にとって」を考えることの重要性
[baloon id=”4″]AIがすごいのは確かだけど、使いこなすには自分の能力も必要なんですね。自分に合った選択をすることが大事だとわかりました![/balloon]
生成AIの登場で、確かに専門家の役割は変わりつつあります。
でも、「専門家が不要になる」という単純な話ではありません。
大切なのは、「誰にとって」不要なのかを、よく考えることです。
- AIを使いこなせるだけの知識と判断力があるか?
- 間違った判断をしてしまったときのリスクを受け入れられるか?
- そもそも、適切な質問ができるほど問題を理解しているか?
これらを冷静に自問してみてください。
もし少しでも不安があるなら、それは税理士に相談すべきサインです。
税理士の役割は、単に知識を提供することではありません。
- あなたの状況を理解し、最適な選択肢を提案すること
- リスクを評価し、安全な方法を一緒に考えること
- 何か問題が起きたときに、責任を持って対応すること
これらは、どれだけ優秀なAIでも代替できないものです。
生成AIは強力な道具です。でも、その道具を誰がどう使うかで、結果は大きく変わります。
自分にとって何が最適な選択なのか――それを見極めることこそが、経営者として最も重要な判断の一つかもしれません。
税務に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。あなたの状況に合わせた最適なサポートをご提案いたします。

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