役員報酬の注意点

こんにちは、公認会計士・税理士の川畑です。

突然ですが、皆さんは役員報酬について、支払った金額をそのまま経費にできると思っていませんか?

でも実は、そう簡単な話ではないんです。支払った役員報酬を税金計算上の経費とするためには、いくつかのルールをクリアする必要があります。

それを知らないと、「役員報酬が経費にできなくて余計な税金がかかっちゃう。」なんてことも。

川畑文秀

役員報酬に関するルールを知って、思わぬ落とし穴を回避しましょう!

役員報酬の税務上の重要性

さて、すでにお話した通り役員報酬をテキトー支払うと、税額に大きく影響してしまいます。

これを知らないでいると、せっかく役員報酬を取っていたのに

「その給与、税金計算では経費になりませんよ…」

という思わぬ落とし穴に転落しかねません。

だからこそ、正しい役員報酬の正しい設定方法を知っておかなければなりません。

大前提:役員給与は原則として経費にならない

大前提として、役員給与は原則として税金計算上の経費になりません。「え?うそでしょ!?」と思いそうですが、残念ながらそのようなルールになっています。

しかし、「一定の要件を満たす場合には経費にして良いよ(損金算入)。」ということになっています。そのルールが「定期同額給与」「事前確定届出給与」です。

※業績連動給与は一般的な中小企業では適用できないケースが多いため、本記事では解説していません。

  • 定期同額給与:毎月同額で支給される報酬
  • 事前確定届出給与:あらかじめ決めた時期・金額を税務署に届け出ることで、特定のタイミングに支給できる報酬

参考:国税庁HP「No.5211 役員に対する給与


定期同額給与とは?

川畑文秀

まずは定期同額給与からお話ししましょう。

定期同額給与とは、その名のとおり毎月(定期)に同じ金額(同額)を支給する役員報酬のこと。

支給時期は1ヶ月以下の一定期間ごとで、金額は事業年度内はずっと同額である必要があります。ここが守られていれば、原則として法人の損金に算入することができます。

今月は30万、来月は40万、その次は30万みたいなのは認められません。

要件のポイント
・支給間隔が1ヶ月以下であること
・事業年度内で支給額が同一であること
・金額変更は原則、事業年度開始から3ヶ月以内に行う

もし途中から支給をスタートしたり、特定の月だけ増額したりすると、税務上“損金不算入”とされてしまいます。この点には注意が必要です。

特に事業年度の中途で「やっぱり報酬を増やしたい!」と思っても、タイミング次第では認められないケースがあるので注意してくださいね。


3. 事前確定届出給与とは?


次に、事前確定届出給与について解説します。こちらは、事前に「いつ・いくらを支給するか。」を決めて税務署に届け出ることで、指定したタイミングに支給される役員報酬です。

一般的には役員賞与という形で支給されるケースが多いですね。

要件のポイント
・株主総会などで支給時期・金額を正式に決議し、その議事録を作成する
・届出書を期限内(※)に税務署へ提出する
・届出書に記載した支給時期・金額どおりに支給する

    届出内容と違うタイミングで支給してしまったり、金額を変更してしまったりすると経費にできなくなるので要注意です。スケジュール管理をしっかり行うことが大切ですね。

    ※基本的には事業年度開始から4ヵ月と株主総会の日から1ヵ月のどちらか早い方が期限になります。


    定期同額給与と事前確定届出給与の比較

    表形式にすると、両者の違いがより明確になります。下記のような比較を参考にしてください。

    定期同額給与事前確定届出給与
    支給形態毎月同額を支給指定日に一定額を支給(賞与的)
    届出の必要性不要必要(税務署へ提出)
    主な利用目的月次報酬賞与や特別報酬に活用されるケースが多い
    損金算入要件毎月同額を原則1年間継続事前の決定・届出・予定通りの支給が必須

    表を見てもわかるように、

    定期同額給与は「月々安定して同じ額をもらう」スタイル

    事前確定届出給与は「特定の時期に報酬を集中させる」スタイル

    と考えるとわかりやすいですね。

    どちらも損金算入が認められます。ただし事前確定届出給与は事前の届出と届出に基づく支払を守らなければ損金になりません。このため、ボーナスを取る場合には制度上の要件をしっかり守る必要があります。


    役員報酬の実務上の注意点

    実際に役員報酬を設定する際には、次の点に気をつけましょう。

    1. 報酬額が不相当に高額でないかチェック
      • 他社の役員報酬や業界相場と比較して、合理的に説明できる水準にしておくことが大切です。ただし、極端に高額な報酬ではない場合には大きな問題となることはありません。
    2. 株主総会や取締役会での決議&議事録の作成は必須
      • 決議を省略してしまうと、税務上も問題になりやすいので要注意。
    3. 税務リスクを避けるため、専門家への相談を推奨
      • 特に定期同額給与の金額変更や事前確定届出給与の届出タイミングは複雑なので税理士に相談すると安心です。

    もし報酬設定を変更したい場合は、事業年度開始後3ヶ月以内に変更ができるかどうか、あるいは事前確定届出の期限に間に合うかどうかをしっかり確認してから対応しましょう。


    まとめ:適切な役員報酬設定の重要性

    今回は、定期同額給与と事前確定届出給与について、その仕組みや要件、注意点を解説してきました。

    適切に設定すれば、法人の損金算入が認められ、税務リスクも軽減できます。

    一方、制度を知らずに自己流で設定してしまうと、損金不算入となって余計な税金を払うことになりかねません。経営者の皆さまにはぜひ、専門家のアドバイスを活用しながら、会社の実態にあった役員報酬を設定していただきたいと思います。

    川畑文秀

    役員報酬に関して不安がある方は、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください!

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    • 定期同額給与:毎月決まった金額を支給 → 法人の損金計上が認められるが、途中変更には厳しい要件
    • 事前確定届出給与:支給時期や金額を事前に届け出 → 賞与として活用しやすいが、届出内容厳守が必須